ローズ3月号

<四季彩> 

大正ロマン香る館へ

「懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております」が冒頭の語りだった。映画「男はつらいよ」第一作が半世紀前。最新の第五十作「お帰り寅さん」にも笑って泣いた。「さくら」が妹。演じる倍賞千恵子さんはずっと「桜」そのものだった。
葛飾に勝るとも劣らない桜の名所は名古屋に幾つもある。山崎川に鶴舞公園。市役所の東に位置する市政資料館もいい。敷地内には早咲きも含めて各種約百十本。大正ロマン香る館が春暖の候の一カ月近くにわたって華やぐ。
旧裁判所庁舎で一九二二(大正十一)年に建った。当時は名古屋控訴院、後に高等裁判所。長く中部の司法の中心だった。重厚な造りで国の重要文化財。ネオ・バロック様式の中央階段室は荘厳さが漂う。